[前の画面に戻る] [INDEX]

抱朴子のミニロゴ

 金丹 【キンタン:丹砂と金を合わせた薬。】
←前頁  INDEX→

丹薬というものは、火を加えれば加えるほど神妙なる変化が現われ、一方、黄金は火に入れて、百回錬造してもその量が減ることはなく、地中に埋めても天地が終るまで錆びることはない。

この二つを服用して身体を練るがゆえに、人は老いることがなく、死ぬこともない。これは、外界の物質の力を借りて自らの身体を強固することであり、油が火を養って火が消えないような働きをしているに似たり。

銅青を足に塗って水に入れば、足が腐れないのは、銅の強さをもって身体を守っているからであるが、金丹を身体にとりいれることは、銅の働きには及びもつかないほど、神妙なることである。
(※参考→ 1丹砂 2黄金


九鼎丹 【キュウテイタン】
黄帝の九鼎神丹経には、黄帝はこれを飲んで昇仙した、とある。草木の薬を飲んでも、長寿にはなれるが、死は免れない。しかし、神丹を飲めば命は尽きることがなく、天地とともに生き、雲に乗って龍を使い、天と地上を自由自在に行き来できるようになる。

世の人々は神丹を用いず、草木の薬を信じるが、草木の薬は埋めれば腐り、煮れば崩れ、焼けば焦げる。自らを生かすことができないで、どうして人間を生かすことができようか。

<種類>
丹華 まず、玄黄を作るべきである。雄黄水(赤色硫化砒素)、礬石水(ミョウバン水)、戎塩、鹵塩、ヨ石、牡礪(牡蠣の殻)、赤石脂、滑石、胡粉をそれぞれ数十斤を合わせて、それらを六一泥で封じ、これを焼くこと36日にして完成し、これを7日飲めば仙人となる。
また、この丹を玄膏で丸め、猛火の上に置けば、黄金となる。これを水銀100斤と合わせて火にかければ、これもまた黄金となる。黄金にならなければ、更に火で焼くことを繰り返す。

神丹(神符)
 これを100日飲むと、仙人になる。水や火を渡るときに、この丹を足の裏に塗れば、水上を歩行することができる。これを3サジ飲むだけで、百病が快癒する。

神丹
 1サジ飲めば100日で仙人になれる。家畜に与えれば死ぬことがない。また、敵の兵器をしりぞけ、仙人・玉女・山川の鬼神がみな集まって、仕えるためにやってくる。

還丹
 これを100日飲めば仙人になる。朱雀・鳳凰が頭上を翔け、かたわらには玉女が侍る。ひとさじを水銀一斤とあわせ、これを焼けば、たちどころに黄金となる。これをお金に塗って使えば、その日にお金が戻り、これを使って凡人が目上の人に手紙を書けば、百鬼が逃げてしまう。

餌丹
 これを30日飲めば仙人になる。鬼神が来て侍り、玉女が目の前に現われる。

錬丹
 これを10日飲めば仙人になり、水銀を合わせて焼けば黄金となる。

柔丹
 これをひとさじ飲めば100日で仙人になる。缺盆汁(薬草の汁)を以って合わせこれを飲めば、90歳の老人も子供を作ることができ、鉛と合わせてこれを火にかければ、黄金となる。

伏丹
 これを飲めばその日のうちに仙人になれる。ナツメの種のような丹を持つと、百鬼が退散し、丹で門の上に文字を書けば悪鬼邪鬼のたぐいをしりぞけ、盗賊や虎狼も退ける。

寒丹
 これをひとさじ飲めば100日にして仙人になれる。仙童仙女が侍り、羽根を使わずに空をとぶことができる。

以上、9種の丹は、そのどれを飲んでも仙人となることができる。全てを作る必要はなく、好むところの丹を作ると良い。




太清丹 【タイセイタン】
太清の神丹は元君(人名:老子の師匠)が作り出した。「太清観天経」は九篇から成って、上三篇は伝えることはできず、中三篇は伝えるに足る人間が無く、常に泉の底に沈めていた。下三篇を手に入れることができ、それがいわゆる「太清観天経」である。

元君は大神仙の人である。陰陽を調和させ、鬼神風雨を使い、九龍、十二白虎に車を牽かせ、天下の仙人たちが全てこれに従っているが、自らをこう言っている。「私は道を学び、丹を飲んだからこそ、このようになったのである。生まれつきこうだったわけではない」と。ましてや凡人をや、である。

其経に曰く。上士が道を得れば昇って天官となり、中士が道を得れば崑崙に住み、下士が道を得れば世間で長生きする。大衆は愚かで道を信じず、朝より暮れまで、ただ死を求めるに等しいことをし、生を求めず。それをどうして強制的に生かす必要があろうか。

凡人は、ただ美食や美しい衣装、富貴を知っているだけで、欲のおもむくままに生きて、たちまち死んでしまう。神丹をこのような者たちに教えて、笑われたり、謗られたりしてはならない。
丹経を伝えるのに、相手に恵まれなければ、不吉である。もし、篤く信じる者がいたとしたら、薬を分けてやることはしても、軽軽しく方法を教えてはならない。

神丹が既に出来上がれば、長生きできるだけではなく、黄金を作ることもできる。金が出来上がれば、まず、百斤を取り、祭る場所を設けよ。祭り方には別の一巻があって、九鼎の祭りとは違う。祭る時は、金を量って検査すべし。
永遠に生きつづける方法は、祭祀を行い鬼神を使うことでもなく、導引術で体を強くすることでもない。仙人となるにはまさに神薬がカナメである。



九光丹 【キュウコウタン】
九転法とは違うが、おおむね似ている。これを作る方法は諸薬を合わせて焼き、五石を転がす。五石とは、丹砂・雄黄・白凡・曾青・磁石である。一石を五回転がし、五石で25色となる。それぞれ一両づつを違った器に盛る。

死んでまだ三日経っていない者を起こすなら、青丹をひとさじとって、水と混ぜて死人を沐浴させ、口にこれを入れれば、死人はたちどころに生き返る。

弁当(食物)を食べたいなら、黒丹を取って水で溶き、左手に塗れば、欲しい物、言葉にした物が現われ、天下の万物を得ることができる。

肉体を消して、未来のことを予知し、老いたくなければ、黄丹ひとさじを服用すればよい。そうすれば、長生きして、座っていて千里の先を見、吉凶も知ることができ、人の宿命、栄枯盛衰、富貴あるいは貧賎を知ることができる。



五霊丹 【ゴレイタン】
丹砂、雄黄、雌黄石、硫黄、曾青、礬石、磁石、戎塩、太乙禹余糧を用い、六一泥及び祭壇の酒を用いて、これを合わせて36日にして成る。

また、五帝符を用いて、五色の色で文字を書けば、人を死なせることができる。ただし、上述の九鼎丹や太清丹には及ばない。



立成丹
 【リツセイタン】
この丹は九鼎丹に似ているが、及ばない。

雌黄(硫化砒素を含む黄土)雄黄(硫化砒素)を焼いて、銅鍋に入れて、三年の淳苦酒を注ぎ、フタをして百日すれば、赤い色の突起が生じ、または、五色の美しき石が生じる。これを飲めば長生きできる。

また、菟絲(ネナシカズラ)と合わせる。菟絲(ネナシカズラ)の根のウサギに似たものを取り、その汁を絞ってこの丹に加えて飲めば、たちどころに変化して、思うがままになる。

また、朱草と合わせてこれを飲めば、雲に乗ることができる。朱草はナツメに似て、長さ3~4尺、枝葉は赤く、茎はサンゴのようである。よく、名山の岩の下に生え、これを刻めば汁が地のように赤い。玉と八石金銀をその中に入れれば、たちどころに丸まり、泥のようになり、そのうち液体化する。

これに金をいれたものを金漿といい、玉を入れたものを玉醴(ギョクレイ)と言う。これを飲めば皆長生きする。



金液 【キンエキ】
金液は九鼎丹(上述)に劣らない。これを作るには、黄金一斤を用い、元明、龍骨、太乙、旬首、中石、氷石、紫遊女、玄水液、金化石、丹砂を合わせて封をし、百日経てば、液体化する。

其経に次のような記述がある。「金液を飲めば、全身金色になる。老子はこれを元君(老子の師匠)より伝授さる。元君は曰く、『この方法はいたって重大、百世に一度しか出すことはできない。これを石室に秘蔵せよ。これを合わせるには、百日間斎戒し、俗人と会うことはできない。名山のほとりの東流の川のほとりに精舎を建てて、百日間待てば出来上がる。これを一両飲めば仙人になれるが、まだ俗世を離れたくなく、地仙・水仙となろうとするなら、百日間斎戒し、もし、天に昇りたければ、まず、一年間食事を断って、これを飲むべし。』」

もし、半両を飲めば、長生きして死なず、あらゆる害毒にそこなわれることもない。妻子を養い、仕事をするも、思うところにまかせても良い。もし、昇天を望むなら、斎戒して更に一両を飲めば、飛仙となる。

←前頁  INDEX→

抱朴子 内篇 巻之四「金丹」より